GORO NAKAGAWA FOLK SINGER 

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GORO NAKAGAWA
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NAOBUMI OKAMOTO


Dig-Music Gazette 10

Me And Bobby McGee

 クリス・クリストファースンとフレッド・フォスターが共作した「Me And Bobby McGee」を初めて聞いたのは、1970年に発表されたクリスのデビュー・アルバムだったのか、同じ年に発表されたランブリン・ジャック・エリオットやゴードン・ライトフットのアルバムでのカバーだったのか、今となってはその記憶は朧だが、この曲にすっかり心を奪われてしまったのは、1971年初めに発表されたジャニス・ジョプリンのアルバム『パール』に収められた彼女のカバーを聞いた時だったことは間違いない。
 すぐにもぼくは日本語に訳して歌い始め、その頃はしばらく歌うことをやめていたのだが、1971年の中津川フォーク・ジャンボリーの加川良さんのステージに飛び入りで出て日本語の「俺とボビー・マギー」を歌い、70年代初めのぼくの「復活」の歌となった。
 そして1972年の初めにはキング・ベルウッド・レコードから「ミスター・ボージャングル」とのカップリングでシングル盤を発表することもできた。
 
 この歌を初めて聞いた時、はたちをちょっと過ぎたぼくにとって、失うものが何もない自由な状態でヒッチハイクの旅を続ける生き方は、憧れでしかなかった。しかしそれから40年間この歌を歌い続けているうち、そのかたちは微妙に違っているとしても、いろんなものを失い、全国を歌って旅することで何とか生計をたてている60歳を過ぎた今のぼくにとって、「Me And Bobby McGee」の生き方は、夢や憧れではなく、かぎりなく現実に近いものになったという気がする。そして歌い続けるうちにこの歌は自分の中、うんと奥深くまで入り込み、完全に自分の歌になったと思う。
 
 「ハンカチ」が「バンダナ」になったり、「あいつと別れてしまった」が「あいつを行かせてやったのさ」になったりと、歌う時の気分で歌詞は変わったりする。日本語に初めて訳した時、「ディーゼル」という言葉をディーゼル・トラックではなくディーゼル機関車と勘違いして、「ボビーは汽車にヒッチハイク」と歌い、それでレコーディングまでしてしまったのは、ほんとうに恥ずかしいかぎりだが、今となっては何とも懐かしくほろ苦い思い出だ。
 
中川五郎

Dig-Music Gazette 09

水と光

 今年2012年1月3日、このDig Music Gazetteの撮影と何か所かでライブをするために沖縄に向かった。沖縄に着いて三日目の5日の午前中、おいしいパンを食べようということで、フォトグラファーの岡本尚文さんと一緒に宜野湾市嘉数にある宗像堂へと出かけた。自家製天然酵母でおいしい石窯パンを作る宗像堂のみかさんとは、彼女がまだ東京にいる頃に下北沢で会っていた。
 宗像堂の建物はもともと米軍ハウスで、庭が広く、大きな木が茂り、裏の崖を下って行くととんでもない秘境があったりする。おいしいパンをいただき、サングリアを飲んでゆっくりしているうち、ここで撮影しようということになり、ギターを取り出し庭で二曲ほど歌ってみた。
 そのうちの一曲が「水と光」で、作ったのは、1975年、今から37年前になる。こんな古い歌を久しぶりに歌ったのは、この曲が沖縄と大いに関係があるからだ。1974年の春にぼくはその時の連れ合いと一緒に沖縄に来て渡嘉敷島に行き、そこの海辺で歌詞のようなことをして、75年の3月初めに娘が誕生した。
 初めての自分の子供がこの世にやって来ることの喜びと不安とを正直に歌ったこの歌を、その時の赤ん坊はすでに30代半ばになってしまったが、沖縄で今一度ぜひ歌ってみたかった。思い出の海辺ではないけれど、宗像堂の緑に包まれた庭で、鳥たちにも参加してもらい、その頃のことやそれからの長い歳月の中で変わってしまったいろんなことを思い浮かべながら、ぼくは大好きなこの歌を歌うことができた。
 
中川五郎

Dig Music Gazetteとは

中川五郎と岡本尚文がコラボレーションして歌と映像を届けるシリーズの名称。
DigはDigitalとDig itのダブル・ミーニング、Gazetteは新聞。

フォトグラファー岡本尚文 Official Site