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GORO NAKAGAWA
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NAOBUMI OKAMOTO


Dig-Music Gazette 08

同じ目の高さで

 2000年5月、横浜の写真家、永武ひかるさんは初めて東ティモールを訪れた。独立を巡る紛争で破壊された町や家々の風景を目の当たりにし、虐殺や恐ろしい暴力事件の話も耳にしたが、彼女の心を強く動かしたのは、瓦礫や廃墟の中でも、目をきらきらと輝かせて笑っている子どもたちの顔だった。
 そこで永武さんは再度東ティモールを訪れることになった時、子どもたちのためにレンズ付きのフィルムを100個持参した。それを子どもたちに渡し、初めて写真を撮ることで彼らに表現の喜びを覚えてもらい、子どもたちの撮ったそれらの写真を写真展や写真集でみんなに伝えることで、遠く離れた場所の子どもたちがどんな場所で、どんな表情で、どんなふうに生きているのかを知ってもらおうと考えたのだ。こうしてワンダーアイズプロジェクトがスタートした。
 その後ワンダーアイズプロジェクトは、ウズベキスタン、オーストラリアのアボリジニ居住区のドゥーマジー、台湾の蘭嶼島(らんゆうとう)、ブラジル、モザンビーク、徳之島などなどの子どもたちと一緒に行なわれた。2006年の初めにはアフリカ、ケニア難民キャンプの子どもたちとの写真プログラムが実施され、その時に子どもたちが撮った子どもたちの写真を集めて、夏に『For A Life アフリカ難民キャンプの子どもたちが写した世界』というタイトルで、東京で写真展が開かれることになった。
 その写真展に向けて何か歌が作れないかと永武さんに言われ、ケニアの難民キャンプでのプロジェクトだけではなく、それまでのすべてのワンダーアイズプロジェクトでの子どもたちが撮った子どもたちの写真をぼくは見せてもらった。そこでぼくが思ったり感じたりしたことを歌詞にし、それに頭脳警察のPANTAさんが曲をつけてくれ、そうして生まれたのが、「For A Life」と「同じ目の高さで」の2曲だ。
 今年のお正月、沖縄で岡本尚文さんとDig Music Gazetteの撮影ができることになった時、どうしても沖縄で歌いたいと思った歌のひとつが「同じ目の高さで」だった。歌の中には、ワンダーアイズプロジェクトが行なわれたさまざまな国や場所の名前が歌い込まれているが、もちろんそれ以外の場所で生きる世界中いたるところの子どもたちのことを思ってぼくはこの歌を歌い続けている。
 みんな同じ子ども。「特別」な子どもなんて地球の上のどこにもいてはならないのに...。
 
ワンダーアイズプロジェクトのホームページ
 
 
中川五郎

Dig-Music Gazette 07

腰まで泥まみれ

 Dig Music Gazetteの主宰者でフォトグラファーの岡本尚文さんから2011年の暮れから2012年の初めにかけて沖縄に行くと知らせを受け、それに合わせてぼくも沖縄に行って沖縄でDig Music Gazetteの撮影ができたらいいなとすぐに思いついた。ぼくは2012年1月3日から8日までの6日間沖縄に行くことに決め、行くなら撮影だけでなくぜひライブもやりたいと浦添市勢理客(じっちゃく)でGrooveというライブ・ハウスを開き、ベーシストとしてさまざまなバンドやセッションで大活躍している沖縄の親しい友人、ガチャピンこと上地一也さんに連絡をし、Grooveだけでなく沖縄市のプレイヤーズ・カフェや那覇栄町市場のサワディーなど、3か所 でのライブを決めてもらった。宿泊は岡本さんのところと那覇の平和通り商店街にあるゲスト・ハウス「An庵げすと・いん」で、「An庵げすと・いん」は、2010年の秋に「ピース・ミュージック・フェスタ in 辺野古」で沖縄に歌いに行った時、大変お世話になり、今回もすぐに連絡をして泊めてもらうことにした。「An庵げすと・いん」の一階のフリー・スペースでは、地元のミュージシャンたちがよくライブをやっていて、今回はそうした人たちと一緒にライブをすることもできた。
 到着した日と出発する日を別にすれば、4日間毎晩ライブをやったわけで、もちろん夕方までの時間は岡本さんと一緒に沖縄のあちこちでDig Music Gazetteの撮影をした。3曲ほどできるといいなと思っていたが、何と6曲も撮影することができた。沖縄に関係した歌もあれば、直接関係のない歌もあるが、どの曲も沖縄で撮影する意味がしっかりとあるものばかりだと思う。
 最初にアップされるのは、ピート・シーガーの「Waist Deep In The Big Muddy」を日本語に訳した「腰まで泥まみれ」。この歌はピートが1966年に書いて、67年の夏にリリースしたアルバム『Waist Deep In The Big Muddy And Other Love Songs』に収めたものだが、ぼくは67年の秋に来日したピートがステージで歌ったこの歌に強烈すぎる衝撃を受け、すぐに日本語の歌詞をつけて歌い始めた。
 1960年代半ば、アメリカがベトナムを侵略する戦争を始め、どんどん深入りして、泥沼化していくことを痛烈に批判した歌だが、過去のできごとを歌った昔の物語歌などでは決してないと思う。ぼくは今の日本、とりわけ2011年3月11日の大震災や原発事故の後の日本のことを歌った歌でもあると強く受けとめて歌い続けてい る。そしていちばん沖縄で歌って撮影したかった歌でもある。
 原発再稼働? 原発新設? 原発海外輸出? 被災者支援打ち切り? 何よりも経済が、お金が大事だなどと、いまだに「進め!」、「進め!」と叫び続けている「BIG FOOL」たちに、ぼくらは絶対についていかない。自分たちで考え、自分たちで行動して行く。
 
中川五郎

Dig Music Gazetteとは

中川五郎と岡本尚文がコラボレーションして歌と映像を届けるシリーズの名称。
DigはDigitalとDig itのダブル・ミーニング、Gazetteは新聞。

フォトグラファー岡本尚文 Official Site